BioShockのレビュー
水と狂気に蝕まれたアールデコの海底都市──ラプチャーは、色褪せたネオンと落ちぶれた栄華のあいだで、豪奢な荒廃を広げてみせる。様式の一貫性と息詰まる空気が、忘れがたい世界をつくる。濃密で霊感に満ちたこのアートディレクションは、作家性ある作品の絶対的規範と称される。
ゲイリー・シャイマンの手による音楽が、不協和で不安を煽る弦と、ラプチャーに響く1940〜50年代の郷愁のヒット曲を織り交ぜる。レトロな甘さとくぐもった恐怖のあいだのこの凍てつく対比が、海底都市の退廃的な空気を昇華させる。この唯一無二の音の個性は、いまもサウンドデザインの頂であり続ける。
自由至上主義の夢の狂気に明け渡された海底都市に流れ着いた男が、悪夢と化したユートピアの裏側を目の当たりにする。物語は自由意志とイデオロギーを問いかけ、やがて伝説となった逆転劇へと至る。FPSに偽装した政治批評として、その筆致は、このジャンルが撃つだけでなく思索しうることを証明した。