Disco Elysium - The Final Cutのレビュー
動く油彩画。筆致の見える肖像、画布から抜け出たような背景、物憂げで土の匂いがするパレット。ノワール小説の挿絵のようなこの個性が、狂おしいほど濃密な世界をまとわせ、絵そのものが物語を語る。
ブリティッシュ・シー・パワー(現シー・パワー)は、霞んだギターと幻滅した弦による空気感豊かなインディー・ロックのスコアを手がけ、レヴァショルの酒に濡れた憂愁にぴたりと寄り添う。音楽は啓示の瞬間にふくらみ、灰色の路地裏へと退き、物語の政治的な憂いに肉体を与える。音が主人公の心情をこれほど繊細に辿る作品は稀だ。
記憶を失った刑事、政治に蝕まれた街、そして己の能力が頭蓋の中で口論する内なる対話。この広大な捜査は戦闘を捨て、類を見ぬ文学的豊かさの膨大なテキストと引き換えにする。一行ごとに、自分が何者になるかが刻まれていく。
戦闘は一度もない。あるのは数十万語と、自ら形づくる人格に反応する膨大な会話だ。内なるスキルの一つひとつが声となり、調査は選択ごとに分岐し、多くの場面は読み返して初めて姿を現す。長さが文章の豊かさから生まれるこの密度こそ、RPGの中でも別格の一本にしている。