Genma Onimushaのレビュー
背景は高い解像度で描かれた固定画であり、視点は動かない。城の各部屋は光も落ちる影も計算された遠近も含め、一度きり構図として決められている。人物はその絵のなかを移動していく。部屋を替えるたびに、頁をめくったような手応えが残るのはそのためだ。
伴奏は剣戟映画の語彙を採る。廊下では尺八の独奏、魔が現れれば乾いた打楽器、探索のあいだは極端に低く保たれた弦。合図の役を担うのは沈黙である。何かが待つ扉を開ける直前には、ほぼ必ずそれが訪れるからだ。
物語は実在の年月に超自然を接ぎ木する。桶狭間の戦いと信長という人物が歴史の土台となり、魔が介入してくるのはそこから先だ。この記録に裏打ちされた足場があるおかげで、裏切りも同盟も純然たる空想より読み取りやすい。誰が勝つはずなのかを、こちらはすでに知っているのだから。