Yu-No - Konoyo no Hate de Koi o Utau Shoujoのレビュー
美意識は描き込みの密度に宿る。細部まで詰めた一枚絵、海辺の町を包む暖色、物語が別の場所へ移った途端に現れる冷たく鉱物的な色調。並行する道筋を樹木のように示す分岐図は、それ自体が図案として成立し、物語の構造を隠さずに見せる仕掛けとなっている。
梅本竜の楽曲が、この物語の劇的な重みをひとりで引き受ける。物憂げな合成音の層、選んだ枝によって姿を変えて戻ってくる鍵盤の旋律、反転の場面のための張り詰めた音型。曲数は多くないが、どれも何十回と聴かれ、聴き直すたびに違う意味を帯びるように書かれている。
並行世界を行き来する力を授かった青年が、父の失踪と、己の手に余る謎を追っていく。途方もない野心を抱いたビジュアルノベルとして、物語はSF、記憶、そして情感を、カルトとなった手腕で結び合わせる。その広がりとめまいを誘う構成が、本作をジャンルの伝説に仕立てた。
二つの時間次元のあいだで謎を解き明かすことは、数えきれない分岐と探るべき結末を持つ、稀有な野心の恋愛アドベンチャーを築く。一つひとつの筋を読み返し、時を操り、入り組んだ物語を解きほぐすには、長い時間がいる。いまやカルト的な人気を得たこの物語の豊かさが、ノベルゲーム好きが大切にする寿命を差し出す。