Airのレビュー
Keyのビジュアルノベル、AIRは、樋上いたるの繊細な筆致に支えられた、夏めいて物悲しい美術を広げる。光に満ちた海辺の町、広大な空、大きく表情豊かな瞳の登場人物が、柔らかな美学を成す。舞台の穏やかな美しさが、やがて訪れる哀しみを予感させる。スタジオの持ち味たる、優しく胸を打つ画。
ピアノと弦により、麻枝准と折戸伸治は肌をなぞるような繊細な情感を紡ぎ、その主題「鳥の詩」はファンの胸に深く刻まれてきた。胸を締めつけるほど繊細な旋律が、ヒロインたちの悲劇的な運命に寄り添い、涙を誘う。心を揺さぶるこの音楽作品は、ビジュアルノベルの規範であり続ける。
三つの物悲しいルートで語られるこの海辺の夏の物語は、翼を持つ少女を探す旅、古の呪い、そして剥き出しの感情を織り合わせる。Keyの筆は郷愁を芸術へと昇華させ、喪失と犠牲を稀なる繊細さで紡ぎ出す。ビジュアルノベルの頂のひとつとして、今なお人の心を激しく揺さぶる。