Eternal Darkness - Sanity's Requiemのレビュー
シリコンナイツが築くのは三千年を貫くラヴクラフト的美学。カンボジアの寺院、大聖堂、1916年の塹壕、時代ごとに固有の色調と建築が並ぶ。名高い「正気度」効果は映像そのものを蝕み、壁は血を流し遠近は歪む。ひたすら不安に奉仕するアートディレクション。
不穏な合唱、不協和の弦、息詰まる音の層が、スティーヴ・ヘニファンの手によるラヴクラフト的な恐怖の空気を織りなす。音楽はプレイヤーの増していく狂気に寄り添い、理性が揺らぐにつれて怪異へと滑り落ちていく。この病的で稀有な知性に満ちた音の空間は、いまも記憶に取り憑く。
二千年の時と十数人の主人公にまたがり、その筆致は、ひとつの時代が次の時代を照らし出す宇宙的恐怖の絵巻を織り上げる。呪われた魔導書を軸に運命が噛み合い、狂気は登場人物のみならず物語そのものをも蝕んでいく。長く比肩なきこの物語の野心は、プレイヤーの心に深く取り憑いて離れない。