Fate-Extraのレビュー
舞台となる学校は模擬空間にすぎず、作品はそれを絶えず可視化する。寸分違わず反復される廊下、灰色の輪郭のまま固まった生徒、闘技場の手前で市松に崩れていく表面。壊れかけた情報という美意識が、あらゆる説明の代わりを見事に務める。
電子音が支配的だが、その温度は低い。濾された持続音、乾いた合成打楽器、端末の作動音が、勝ち抜き戦の日常を据える。一方で召喚のたびに短く大仰な管弦楽が立ち上がり、英霊がそれぞれ自分の時代の音楽を連れてきたかのように響く。
魔術師がサーヴァントを介して戦う儀式の戦争で、記憶を失った参加者が、生存と、己が存在する理由を求めて足掻く。神話、哲学、そして決闘を綯い交ぜにしながら、物語は自己と欲望を、類いまれな強度で問いかける。Fateサーガの異色の一編たる本作は、ひそやかな空気と両義的な登場人物で人を惹きつける。
月の量子計算機のなかでマスターとサーヴァントの闘いを勝ち抜くことは、ターン制の戦略と相手の読み合いが物を言うダンジョンRPGを築く。各階を探り、サーヴァントを最適化し、物語を解きほぐすには、長い時間がいる。丁寧に作られたFateの世界観をまとったこの濃密さが、JRPG好きが味わう寿命を差し出す。