Final Fantasy IXのレビュー
中世ファンタジーへの回帰として、植松伸夫は最も優しい楽曲のひとつを書き上げた。宮廷のワルツ、村のファンファーレ、そして重い心で旅を閉じる切ない「Melodies of Life」。それぞれの街は固有の旋律で息づき、全体に手仕事のような温もりが宿る。その響きは今なお深く心に届く。
心優しき盗賊、逃げる王女、そして旅芸人の一座。中世のおとぎ話の装いの下に、死の恐れと生きる意味をめぐる稀なる優しさの物語が脈打つ。仲間の誰もが固有の物語を授かり、人間味あふれる筆致がそれを支える。
ハイファンタジーへの公然たる回帰を掲げた四枚組で、大勢の登場人物それぞれに物語の弧がある。敵から学ぶアビリティ集め、終盤のサブクエスト、シリーズ屈指の難度を誇る任意の最終ダンジョンが、旅を大きく肉付けする。哀愁を帯びたこの懐の深さは、長く過小評価されてきたが、今や熱い再評価を得ている。