Lost Odysseyのレビュー
植松伸夫の手による楽曲は、胸に迫る「千年の夢」から叙事的な高鳴りまで、カイムの物憂げな旅路を支える豪奢で心を打つオーケストラを繰り広げる。どの主題も、肌をなぞるような深い情感を呼吸する。巨匠でも屈指に美しいこの交響的な豊かさは、いまもこの偉大なJ-RPGの魂であり続ける。
過去を忘れた不死の戦士カイムが、喪失と失われた愛に満ちた、千年の昔の記憶を少しずつ取り戻していく。胸を打つ掌編の数々を挟みながら、物語は、死すべき定めと記憶の重みを見つめる。稀なる深さをたたえたこの憂いが、本作を知られざる、胸を引き裂くRPGにしている。
記憶に苛まれる不死の男の物語を軸に、複数ディスクにわたる王道の冒険が広がり、ダンジョンや町を巡るたび旅は長く続く。ターン制バトルの練り込みや指輪の合成、短編小説の解放など、進行を丁寧に引き延ばす要素が豊富。物語の濃密さと充実の終盤で、名作RPGの評価を今も保つ。