OutRunのレビュー
背景は三つの要素だけで旅を成立させる。後ろから見た赤い幌なしの車、地平へうねってゆく道路、そして分岐のたび丸ごと入れ替わる路肩の風景。椰子、麦畑、断崖、集落が絵葉書のような光の中を流れ、決して暗さに傾かない。
出走画面のカーラジオで選ぶ川口博史の三曲は、本作と切り離せない。陽の当たるラテンの拍、ゆるやかな一曲、広い持続音に乗る合成音の飛翔。移植版は旋律と揺れをそのまま保ち、音色こそ乾いているが勢いは損なわれていない。
赤いオープンカー、髪をなびかせる風、そして気分次第で分かれていく道——旅への誘いは一瞬で訪れる。順位を気にする必要はなく、ただ自分の道を選び地平線へ駆ける喜びだけがある。伝説的な楽曲がその瞬間を彩り、記憶に刻まれる。気ままな速さへの賛歌、その自由は今もまったく色あせていない。