Steins;Gateのレビュー
画面はしばしば携帯電話そのものになる。受信箱、連絡先の一覧、やり取りの履歴が枠いっぱいを占め、極小の書体と通信事業者の図案までが並ぶ。この物語に組み込まれた操作画面は端末を一個の登場人物に変え、読むことと操作することの境目を消してしまう。
音は時間の機構そのものを扱う。控えめな秒針の音がいくつもの曲を貫き、世界線がずれるたびに持続音がわずかに調子を外す。基準音を失った楽器のようだ。研究室の場面は打楽器を排した生ぬるい電子音を保ち、着信の小さな音を際立たせる。
アマチュアの発明家たちが、偶然にも過去へメッセージを送る術を見つけ出すが、その遊びはやがて悪夢へと変わる。稀なる緻密さを誇るタイムトラベル・スリラーとして、物語は逆説、犠牲、そして愛を、胸を締めつける強度で結び合わせる。ビデオゲームSFの頂として、人を惹きつけると同時に深く揺さぶる。
わずかなメッセージひとつで何もかもが覆りかねないタイムトラベルの物語を追ううち、その糸を解きほぐそうと「あと一時間だけ」と引き込まれていく。電話のシステム、分岐、そして数々の真相が、緊張と重い帰結を伴う選択を連ねていく。長い序章は忍耐を試すが、パラドックスの仕掛けと圧巻の筆致が、容易には手放せない引力を保ち続ける。
友を救うために世界線を操ることは、複数の分岐と探るべき結末を持つ、稀有な迫力の恋愛アドベンチャーを繰り広げる。一つひとつの道筋を読み返し、時間のパラドックスを解きほぐし、すべての結末に至るには、長い時間がいる。ゲームSFの頂点たるこのカルト的な物語が、ノベルゲーム好きが大切にする寿命を差し出す。