007 - Everything or Nothingのレビュー
三人称への移行は、諜報員そのものを露わにする。歩く姿、上着を直す仕草、壁へ身を寄せる動き。顔立ちは当時の俳優から起こされ、いくつかの脇役も同様に扱われる。この作品は視点の模擬ではなく、顔ぶれの分かる映画としてふるまうのだ。
伴奏は面ではなく見せ場に合わせて置かれる。曲芸のたびに専用の楽曲が用意され、そのカットの始まりで鳴り出し、終わりで断ち切られる。編集用の音声軌道そのものだ。全体の幕を開けるのはこの作品のために歌われた新曲であり、以後、遊びのなかで使い回されることはない。
ここでは既存の映画を翻案していない。脚本はこの作品のために書かれ、シリーズの俳優たちが台詞を吹き込み、これまで銀幕にかからなかった超微細技術の脅威が主題となる。だからこそ新しい土地と人物を出せるが、事前説明、秘密道具、長広舌を打つ敵役という作法だけは守られる。