Steins;Gateのレビュー
hukeの人物は細長い輪郭と、白飛びに近いほど色を抜いた処理で見分けられる。画面には晩夏の光のような明るさが宿る。背景は実在の建物の正面や物のあふれた路地まで、記録映像に近い精度で秋葉原を写し取り、そこで起きる出来事のありえなさと意図的な対照をなしている。
阿保剛が書くのは抑制された電子音の楽譜だ。持続する音の層と、間隔を空けたピアノの型。音楽のない時間を長く取り、蛍光灯の唸りと打鍵の音だけに場を明け渡す。世界線が分かれるにつれて同じ主題が調を変えて戻ってくるため、その変化そのものが物語の手がかりになる。
アマチュアの発明家たちが、偶然にも過去へメッセージを送る術を見つけ出すが、その遊びはやがて悪夢へと変わる。稀なる緻密さを誇るタイムトラベル・スリラーとして、物語は逆説、犠牲、そして愛を、胸を締めつける強度で結び合わせる。ビデオゲームSFの頂として、人を惹きつけると同時に深く揺さぶる。
メッセージを受け取り、返すか否かを選び、運命が分岐するさまを見る。読み物は、続きを是が非でも知りたくなる手に汗握る時間の謎解きへと変わる。明かされる事実の一つひとつが包囲を狭め、ルート探索へと駆り立てる。立ち上がりの長さには忍耐がいるが、一度動き出せば、筋立ては長く心に残る結末まで引き込む。
友を救うために世界線を操ることは、複数の分岐と探るべき結末を持つ、稀有な迫力の恋愛アドベンチャーを繰り広げる。一つひとつの道筋を読み返し、時間のパラドックスを解きほぐし、すべての結末に至るには、長い時間がいる。ゲームSFの頂点たるこのカルト的な物語が、ノベルゲーム好きが大切にする寿命を差し出す。