Tom Clancy's Splinter Cellのレビュー
サム・フィッシャーを成り立たせているのは動きの作り込みである。二枚の壁のあいだで脚を開いて突っ張る姿勢、索に逆さで吊られたままの降下、首を捕らえてから体を運ぶ所作。どれも切れ目なく繋がれる。装備そのものも仕様書のように読め、帯革、物入れ、頭部後方の三つの光点まで描き込まれる。
既定の状態は音楽ではなく静寂である。換気の唸り、じりじり鳴る蛍光灯、水滴、そして床材で音色の変わる足音だけが場を占める。五系統の音場はそれらを背後と左右へ配し、歩哨は姿を見せるはるか前に耳へ届く。楽曲のほうが稀な贅沢品になる。
物語を支えるのは一つの条項である。フィッシャーは法的に存在しない者として動き、組織はいつでも彼を切り捨てられる。命令は無線で届き、任務の途中で食い違うことすらあり、殺害の許可は事務上の変数のように与えられては取り消される。脅威は敵と同じだけ指揮系統からも来る。