Vagrant Storyのレビュー
くすんだ色合いと彫り込まれた光で描かれた、ゴシックの都レア・モンド──すべてが中世のフィルム・ノワールを思わせる。吉田明彦の洗練されたデザインと映画的な構図が、厳粛な気品を織りなす。暗く絵画的なこの視覚的野心は、いまも本機屈指の美の頂であり続ける。
暗く心奪う崎元仁の楽曲は、レァモンドのゴシックな空気を抱きとめるべく、柔らかな音層、抑えた打楽器、そして生命を宿す沈黙を重んじる。ファンファーレとは無縁に、音楽は稀有な気品の絶え間ない緊張を醸し出す。簡素にして洗練されたこの音の空気感は、いまもジャンルの頂であり続ける。
呪われた都市へ、ある教団の長を追って送り込まれた精鋭工作員が、魔法、権力、そして罪の絡み合う陰謀を解きほぐしていく。前代未聞の豊かさを持つ演劇的な筆致に支えられ、物語は台詞の一つひとつを悲劇の一節のように彫り上げる。この稀なる文学的野心が、本作を本機屈指の称賛される脚本に仕立てる。