Thief - Deadly Shadowsのレビュー
影に沈むゴシックの中世都市、松明の光、絶え間ない明暗──本作は、闇を遊び場とし、美学とする。背景の粒子とこもった空気が、稀なほど濃密な隠密の没入をつくる。暗く丁寧なこの視覚演出が、潜入の芸術を見事に支える。
打ち捨てられた療養所の面には、音楽がまったく置かれない。残るのは子どもの声を録った音、ひとりでに閉まる扉、階ごとに高さの変わる換気の唸りだけだ。他の場所でも低い持続音は歩哨の接近を告げるためだけに現れ、旋律を形づくらぬまま退いていく。
ギャレットには掲げる大義がない。生きるために盗み、都市を奪い合う二つの勢力のどちらにも与しない。それでも予言の中心に据えられてしまうのは、彼の盗みが都合の悪い相手を刺激するからだ。物語はこの醒めた態度を最後まで崩さず、盗人は貼りつけられる英雄役を決して引き受けない。