Baroqueのレビュー
スティングが築くのは肉と錆の世界だ。脈打つ有機的な壁、輪郭を最後まで掴ませない歪んだ人影、病んだ茶と沈んだ赤だけに絞られた配色。操作画面すら説明を拒み、道具は使うまで名を明かさない。この視覚的な不透明さこそが、狙われた居心地の悪さを支えている。
楽曲は旋律を手放し、質感だけを残す。途切れない持続低音、ゆっくりと調子を外していく音の層、音響そのものに織り込まれた金属音。危険を告げもせず前進を褒めもしないため、音楽は論評ではなく環境として働き、何度目の潜行も最初と同じだけ心を削る。
物語は決してまとめて差し出されない。主人公は降り、死に、記憶を失って戻る。一巡ごとに得られるのは、世界を壊したものと自らが背負う罪の断片だけだ。筋を組み立て直すには負けることを受け入れねばならず、死は罰ではなく語りの道具となる。当時としては徹底した選択である。